
演技論。私のお教えしている演技論の内容はおそらく、演劇の学校では聞かないことばかりだと思います。
私のお教えしている演技論は現場で実践してきたものから得られえた内容ばかりですので、私の演劇講座やワークショップを初めてお受けになる方も、基礎練習以外は今まで受けたことがない内容と言われる方が殆どです。
ですので、このさいとうつかさの演技力会話力Blogも変なこと書いてるな…と思われる方も多いことだと思います。
ただ、私は大真面目に書いてまして、もしも共感いただければ是非それを実践していただきたいと願って色んな視点から書くようにしています。
私にも周りには演劇の先輩方がおられますので、このBlogを書くこと自体、かなり勇気のいるところでもありますが、それでもこうして演劇指南の内容をBlogで書いているのは私なりの理由がございます。
理由はここでは申し上げませんが、本Blogを以前からご覧になられて内容に共感いただいてくださる方は、おそらく私が何故このようなBlogを書いているのかという動機も何となくお察ししただけるのかもしれません。
さて、今回のテーマ「観客に想像していただく演技」もかなり変わった内容であります。
本当は「お客様に想像していただける演技」という内容でお教えしているのですが、この文言ですと、どうやら日本語が少し変に見える文言ですので、上記のテーマに変更しました。
ですが、この内容を読み終えましたら、本来のお題の意味がご理解いただけるかと思います。
まず、役者の皆様は、台本を手に取って、自分の役を演じる時に心掛けることがあるかと思いますが、それはどういった心掛けでしょうか。
おそらく多くの役者が、自分の役の心情をしっかりと理解して、その理解に基づいて表現をするということではないでしょうか。
私もその一人です。
ですが、このこと以外に何か心掛けていることはありますか?
というのが今回のお話です。
これからが私の話す謂わば変な内容なのですね(笑)
役者の殆どが心掛けるこの「自分の役の心情をしっかりと理解して、その理解に基づいて表現をする」という内容は、おそらく演劇の学校でお教えしていただける内容かと思います。
ですからこの内容こそが演技の勉強と考える人も多いのかもしれません。
自分のセリフをどのような心情で語るか……
どのように動作するか……
そういうテクニックを練習する。
「もっと大きな声で」
「囁くように」
「緩急をつけて」
「もっと強く」
「もっと優しく」
「もっと滑舌よく」
「アクセントが間違えないように」
「イントネーションをはっきり」
「もっと大きく動いて」
「直ぐに動く」
というように、どのように表現するのかということを重点的に練習される演劇学校が多いのではないでしょうか。
もしそうなのであれば、それは「伝える技術」を身につける練習になります。
勿論、これは一概には言えませんが、
このように表現すればお客様はこう感じるという前提
で練習しているということです。
このようにおこなう表現練習は、自分の表現の幅が広くなりますので当然必要です。
ですが、お客様の状況や状態によっては、
「このように感情表現すればお客様はこう感じる」という正攻法では通用しない場合もある
のです。
これはこれから経験していけば分かることなのかも知れませんが、年に数本の舞台経験だけとなれば話は別で、そういった少ない経験の中で、「正攻法では通用しない」と気付けるのはかなり難しいようにも思います。
ここを気がつけるように微力ではありますがサポートする。
それがこのBlogの目的でもあります。
演技というのは自分で観ようとしなければ
見えない技術
なのですね。
ですから、いくら素晴らしい教えを受けたとしても、学ぶ側が高い意識でもって臨まなければ、得られない技術なのです。
私の学び舎でも、ここを肝に銘じて練習を行ってます。
学ぼうとする方には決して簡単に演技術は身に付きませんということを常に述べ、如何に役者は凄いことをしているか、演技術が崇高な技術であるかを日々お伝えしているところであります。
前置きは長くなりましたが、これらを踏まえて本題に入ります。
「お客様に想像していただける演技」とはどういうものか。
それは一言で言うと
ホスピタリティーのある演技
ということです。
ホスピタリティーとは、いわゆる「おもてなし」ですね。
前述の「こう表現すればお客様はこう感じる」というのは、表現の演技テクニック。
今回のホスピタリティーのある演技というのは、「こう動けば、お客様はこのように見ていただける」という演技術なのです。
つまりお客様をエスコートする演技なのです。
『今からのシーンはとても重要ですよ』
『今はこちらをご覧下さいね』
『ここで問題です』
『今の動き覚えておいて下さいね。後で答え出ますから』
というような演技が実はあるのです。
観客を誘導する演技なのです。
具体的に言いますと、
お客様の注意を無理なく惹きつけたり、ストーリーの中のポイントポイントに「何故?」「どうして?」という演技を作って、その答えを自然にお求めいただくという見せ方を作るようにする
のです。
このような演技をすることで、お客様にお芝居を観ながらも次の展開に思いを馳せるといった
想像の余地が生まれる
のです。
次の展開に予想すると、今起きているお芝居の展開はどんどんどんどん早く感じるようになります。
そうすると、お客様はその話の流れに遅れまいと、さらに集中して情報を取りにいこうとするのです。
これがお客様がお芝居の世界に入りやすくなるカラクリなのです。
お客様が観劇でこのような体験をすると、
2時間があっという間
と感じるのですね。
ですので、お客様に想像していただく余地を作る演技を作ることはとても大切なことなのです。
想像していただくということは、つまり断定的な表現は出来るだけ避けるということ。
何故かと言いますと、物語の展開される数々の出来事の中で、言わんとすることが途中でお客様に分かってしまうと次の出来事までの時間は待ち時間になりテンポの悪い芝居だと感じてしまうのようになるのです。
さらに言いますと、明らかに次の展開が分かるような見せ方をしてしまうと、お客様は付き合わされているみたいでしらけてしまうのです。子供向けのお芝居を大人が見れば、そのことは簡単に想像がつくかと思います。
そして、このことが分かってくると、
分かりやすい演技はお客様にとっては実は不親切なんだ
ということも見えてくるでしょう。
分かりやすく想像しやすい表現は却って仇になることもあるのです。
ですから、お客様に分かりやすいような表現「このように感情表現すればお客様はこう感じる」という正攻法だけで演技表現は出来ないのです。
というように、これは役の人物の心情とは全く関係のない、お客様とのコミュニケーションを図るための演技でもあるのです。
ですが残念なことに、こういう演技があるということも、段々と知られなくなりました。
または、そのような演技自体が残っていても、その演技本来の意味するものとは違っていて、本来の使われ方をしていないものもお見受けされます。
勿論これは、演技継承が段々となされていないことも一因ではありますが、それよりも、演劇自体の意識の方向性が変わってきている。または、ずれていってるのもその一因ではないかと思います。
つまり、そういう技術は大したものではなくなったという認識が広まったのかもしれません。
ですが、私はこのホスピタリティーのある演技がとても大切なことと思っておりまして、この技術こそが
精神世界を映し出す芸術表現
だと思っているのです。
この話をするとまたとてつもない長い文章になるので、ここでは書きませんが(笑)
それくらい重要でこのことこそ私が広く知っていただきたいこと
なのです。
演技は先ほども申し上げましたが、自分で取りに行くというをしなければ自分のものになりません。
ですから、このBlogの内容も、取りに行くという意識がないと心に響かないと思います。
幸い、本Blogをご覧になられて共感して下さる方でしたならば、既に技術の習得を自ら取りにいこうとする方だと思います。
ですからその辺りは心配ないのですが、取りに行こうという方が少なくなっているのも事実かなとは思います。
ただ、これは言い換えると、取りに行こうとする意識の高い人は素晴らしい役をいただけるチャンスが大いにあるということです。
この世界は意識の高い人が上のステージに上がれる世界なので。
如何でしょう。
「観客に想像していただく演技」というお話、お分かりいただけましたでしょうか。
何度も言いますが、この演技、一つひとつは本当に細かい演技なのです。
ですから、この一つひとつの演技に意味を見いだせなければ大したことのない演技になります。
それでも、習得したいという方がおられえれば、是非、劇団ブルアの俳優養成講座にお越し下さい。
兵庫県の西宮でやっております。
俳優養成講
https://burua.net/actor_training_course/
劇団に所属してらっしゃる場合はワークショップもあります。
いわゆるえんげきの会
https://burua.net/yuruen/
是非、私たちと一緒にお芝居しませんか。


さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。さらに、自身のBlog『さいとうつかさの演技力会話力Blog』は1000万PVを超え、多くの方々から支持を得ております。