至極、当たり前のことを書いているようですが…(笑)
これ意外に皆さんできていないのです。きつい言い方に聞こえるかもしれませんが、これはどういう事かというと、
見ている人に感情表現が分かってもらえるように頑張る人が多い
から見ている人の為にしているということになっているのですね。
しかし、残念ながら、このような練習では絶対に上手くなりません。
何故なら、
感情というものは湧き出てくるもので意図的に出すものではない
からなのです。この大原則をお教えしているところは意外に少ないのかなと思います。間違った演技練習をした表現は、例えばこのように見えるのです。
「私は今怒ってます!」「私は今悲しんでます」「泣いています」
などなど…
これ全部感情を出そうとしている表現なのです。これは、役の人物ではなく役者の動機が見える演技と言います。
つまり演技者の動機が見えてしまっている勘違い演技
なのです。これは演技ではありません。演技だと思ってしているのですけど演じているだけなのです。
本当はですね。上記のような間違った表現をしている人は、本当は心が動いていないのです。そしてそれはその表現者自身が一番よく分かっているのです。心が動かないから、感情を出すことで頑張って働かせようとしているのですね。しかし、演技というのは自分の心を動かすものであってほしいのです。自分の心を誘発させる技術が本当の演技なのです。ですから、どうすれば感情が湧き上がるのだろうかということを探究する自分の為の練習が必要になるのです。
この技術を使うと自然に感情が湧き起るといった表現が出来るようになる。ですから、そういう技術習得の練習をしていただければと。
しかし、この演技技術はとても残念なことでありますが、演技をお教えしている先生方にも、あまりよく分かっておられない方が多いようにお見受けします。演劇の学校でもこのような技術をお教えしているのは少ないように思います。
ですので、舞台で本当に生きているような作品の世界に引き込める俳優になるために、感情が動くメカニズムからまず知らなければいけないのですね。
感情が動くメカニズムを知る・・・つまりどういう風に感情が発生するのかということを知る必要があるのです。
この時にキーになる言葉が、
身体動作から感情を誘発させるという練習
まず、この感情が動く時にどういう動作をしているのかを知り、それを模倣する。その模倣を何回も何回もすることにより、やがて自分の中で感情が誘発される感覚を掴むようにする。
これが本来の演技練習なのです。人に見せるための練習では実はいけないのです。
自分の感覚を掴むための演技練習
これはいわば自信を深める練習でもあるのです。今の環境は如何ですか?・・・もし「ダメ出し」の飛び交うような練習でしたら自信はなかなか深められないのではないでしょうか。
また、自分には嘘がつけません。自分が嘘だって思うと、観ている人にも無意識に伝わってしまう・・・これが演技の世界。ですから、自分が本当だと信じた状態で演技をしないと観客に意図通りには伝わらないのです。このことを頭入れて練習をすることをお薦めします。
今回話した、お話は演技練習のお話です。お稽古とは違いますのでまたその点はいつかお話しします。ただ公演ありきになってしまって、稽古はしても演技練習は・・・っていうところも多いかも知れませんね。
最後までご覧いただきありがとうございました。
さいとうつかさ
劇団ブルア 代表
劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。