点と点を繋げることが面白い

違う言い方をすればですが、線を繋げているだけの演技プランでは面白くなく、点と点を作る演技プランの方が断然面白いというわけです。点と点を作れば、あとはお客さんに想像していただいて繋げていただくことをしてもらえれば良いということです。これは普段の会話でもそうですが、質問がない、理論だけを延々と述べている話は面白くありません。言ってることは興味深いのですが、想像をしなくても理解が出来ると脳は考えなくなるのです。

要は眠たくなるということです(笑)

それよりも、話の中に問題提起をしっかりと入れて、相手に疑問を投げかけながら話している会話は面白いものです。話の中に、『?』を入れると聞き手はそれを考えたり、想像したりするのですが、話し手がこのような話が出来ると、聞き手は面白くなるから話に関心を寄せることになるのです。

つまり、コミュニケーションは、相手に想像をさせることが出来るととっても話が弾むのです。これはお芝居でもありまして、私たちの中では「なぜ?」を作ることで関心を寄せてもらうということをしています。

例えば、嬉しいことがありましたが、本人はあまり嬉しそうではありません。なぜ??これは「嬉しいこと」という点と「本人はあまり嬉しそうにない」という点であらわされています。この点と点の間をお客さんが想像すると面白いのです。

しかし、これを台本から答えを得ようとすると、線になるので、嬉しいことがありましたが「こうこうこういう理由」であまり嬉しくないのですよ。と全く想像の余地がなくなり、お客さんが想像出来ずじまいとなり、そうなんだって済んでしまうのです。

つまり台本から答えを探すとどうしても線になってしまうので、お客さんの楽しみを奪うことになっているのです(笑)

ですので、「こういう点がありました。そしたらこういう点が出てきました。」という点をたくさん用意してあげて、お客さんに線を引っ張ってもらうことをしてもらうことが何よりも大切なのです。その点を見つけるためには、最初に読んだ時の感覚がものをいうのです。最初に読んだ時に、こう思いませんか?

「これって、なんでこうなったんだっけ?」

そうしてもう一度台本を照らし合わせ、「なんだ。そういうことか」と分かると思うのです。この時に自分はすでに分かってしまっているので、分かっているという前提で練習に取り組んでしまう。そうではなく、このような疑問が出てくるということは、ここが疑問のポイントですよということを頭に入れて、それをどう見せるかが鍵になるのです。疑問のポイントを上手くお見せすることが出来れば、次にすることは、その疑問の答えを出来るだけ分かりにくく表現することの方が『親切』なのです。問題は簡単に分かっては面白くありません。ですので、面白くするという観点から『分かりにくくする』は『親切』なのです。このような、何故の点と答えの点を用意することが私たち演技者の仕事なのです。

問題を分かりにくくさせるためには、台本には書かれていない、登場人物のバックグラウンドがとても重要になります。この登場人物のバックグラウンドが一つ一つの点となって、その点を繋ぎ合わせるのがお客さんの楽しみであるわけです。とってもややこしい話にはなりましたが、これで台本に答えがないという意味は何となくお分かりいただけたかなと…(笑)

最後に、お客さんは、どういう役の人物に感情移入すると思ますか? それは、お客さん自身が苦労に苦労を重ねてようやく理解できた役の人物に感情移入するのです。役の人物を何層も何層も垣間見ることが出来て、この人はこうであろうと予測をしていくと、いつの間にかその一つ一つが自分の人生にも当てはまるものとして認識することもあるのです。ですので、同じ道を歩んだと思える人物に共感を得られるのは自然なことなのですね。私はこういう人間ですから見て下さいという人にあまり関心が集まらないのは、層を重ねず、一層で勝負しようとするから共感が得られないのです。

最初嫌な人だと思ったけど、段々一緒にいるといつの間にか関心を寄せてるってこと、今までに経験はありませんか。今人生のパートナーは最初合った時最悪だったっていう方結構いると思うのです(笑) 人は一層だけでは判断できません。何層も何層も重ねてみることで、その人の深みが出てくるのだと思います。 そういう風にして人間関係をじっくり育てたいものですね。演技プランは相手への見せ方を勉強させていただいただけではなく、このような人間関係の基本的なことも教わることが出来ました。

これは私にとって、何にも代えられない宝物です

皆様にも、この宝物を手に入れていただければと願ってお伝えしました。ややこしい話だったかもしれません。

最後までご覧いただきまして感謝いたします。ありがとうございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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