本質が分かれば見え方は変わる

演技プランというのは、演技を行う上での指針になります。これを基に表現を組み立てていくわけです。この演技プランというのは、まず演劇の本質を理解する必要がありまして、まずこの話をいたします。ただ、演劇の本質というのは、話せばとても長くなるので、ここではざっくりとお話しします。一言で言えば、

演劇は劇的な展開のある話を表現する

ということです。文章でも起承転結とよく言いますね。この『転』の部分がとても重要で、ここの部分を劇的にするのです。この劇的なところを、

どのようにお見せするのか⁉

ということがとても大切なのです。この劇的な部分は、どういうものかというと、主人公・・・つまり人の心の葛藤が描かれているところを指します。

ある出来事を境に人の心が移り変わるところ

なのです。そしてここが急激に変われば変わるほど、物語としては面白いのです。急激に変わることを劇的というのです。薬品でも劇薬って言いますよね。よく、話でジェットコースターの例を出されますが、山あり谷ありの落差が高ければその分面白いですよね。この演劇の本質をよく理解すれば、どのようにすれば面白くなるのかが、なんとなくイメージできるのではないでしょうか。

例えば、悲劇の場合なら、結末が深い哀しみを表したいのであれば、劇的を境に、その前はとても楽しい、ないしはこの上ない幸せな状況を表現する。このことがとても大切なのです。言われてみれば、そんなの当り前とお感じになられる方もおられるかもしれません。しかし、この本質を十分理解して演技をしている人はいったいどれくらいおられるのでしょうかと言われれば、如何でしょう。台本から演技の表現の答えを探していてはこの本質を理解して読み込めているとは言えません。それは何故か?

台本に書かれている台詞には裏腹な思いがたくさん籠められているからです。

おそらく作者はこう思うでしょう。

私の緻密な意図を汲み取ってはいただけてない

と・・・・・。この意図を汲み取ることは本当に難しいのですが、

演劇の本質を理解すれば、緻密な意図のある台詞には疑問の余地が必ず出てくる

のです。つまり、本質に基づいた見方をすれば、「この台詞はおかしい?何か意味があるに違いない‼」と気がつけるようになるのです。そうすると、

この台詞にはこういう意味があったのか‼

という唸りたくなるような意図がたくさん見つけられるようになるのです。でも最初は分からないものなのです。

これってどうしてこういうセリフになってるのかな・・・?分からないな・・・え?もしかして、ここの台詞にかかってるのかな・・・?そんなまさか・・・え?でも・・・マジで!うわっ‼めっちゃ辻褄合うやん‼ええっ⁉・・・こんなんわかるわけないやんか!

と言いながらも、悦に浸るのです(笑)一つの高い山を制覇した感じですかね(笑) いや、それくらいの感動はあります‼ 作者の書かれている作品には魂が入っている。その魂はどこかで繋がっていて、そういった繋がりが出来た時に、とてつもないエネルギーが生まれ、それが劇場全体を一つにさせるのだと感じるのです。作品の魂は勿論、目に見えるものではありません。ですから、私たちはその魂を感じることがとても大切なことなのではないかと思うのです。最初から完成された物は作れません。色んな過程を踏んで、完成されるわけです。その完成に必要なのは一体感になることだと思います。一人の作家では成し得ない。たくさんの表現者でも成し得ない。お客様がいて初めて成し得るもの。そういう作品が素晴らしい作品だと言えるのではとそのように思っております。演技プランはこのように作者の隠れた意図を酌み取れば大体のイメージは出来るようになります。作者の意図をしっかりと酌み、それを自分の演技に反映し緻密に構築することなのです。

如何でしょう。演技プランって大事なんだなということが少しでもお分かりいただけたのではないかと思います。この演技プランの実際の作り方は、またいつかご説明しますが、大体この技術を習得するのに数年はかかると覚悟した方が良いですよ(笑)

因みに私は10年かかりました(笑)

でもあまり参考にならないかと思います。それだけ私は不器用でしたから・・・(笑) 講座やワークショップでは台本を読むのには技術がいると、毎回申し上げております。何故、技術というかというと、台本というのは、普通に読んでも見えないものが多すぎるからなのです。ですので、今回は比較的簡単な、演劇の本質から見てどうお見せするのかという話でしたが、本当は台本には色んな指針で見ることが求められて、それを習得するのはやはりそれなりの時間が要るのです。

人は固定観念で物事を見て判断します。これは、いわゆる指針に基づいた視点です。指針があると判断しやすいのです。視野の広い人は色んな指針に基づいて物事が見られるのでより立体的な見え方が出来て、その人の言葉に力が現われるのです。俳優もこれに見習って、色んな視点から物事を見る練習が必要なのです。そうすれば、演技に力が増して、お客様をより自分の味方についていただけるようになります。色んな指針でもって物事を見る。例えば、

私のもし相手役の人だったならば?

もし私が、音響さんでその立場で演技者に望むものは何だろうか?

もし私が、照明さんだったら・・・

もし、私が演出さんだったら・・・

こういう風に、身近な人のイメージからみていただいても結構です。これが出来るようになれば、もっと広げて、

この作品で、お客様に何をお伝えしたいのか?

演劇は素晴らしいと思ってもらえるためには私たちは何をすれば良いのだろうか?

社会に役立つためにはどうすれば良いのだろうか?

このように広げていければ良いですね。そのように意識を高く持つことで、演技プランに反映できれば、素敵ですね。そんなの全然関係ないのではと思う方もおられるかもしれません。しかし、私たちの根本の問題は、今の視点だから、変わらないという本質も兼ね揃えているのです。それは、何かの事象が起きた時、今の自分のモノの見方で物事を見ているからこそ、いつまで経っても変わらないとも言えるのです。しかし意識が高いとこういう風になります。

普段、当たり前のようにやっていたことが、ある日突然、なんでこれをしているのだろうと疑問が湧いてきた。

おかしい‼

というように、普段の自分に違和感を感じることが出来るわけです。自分のステージを変えるには、まずこの気づきがとても重要なのです。

今の見方で考えるから今のままになっている

これは台本の読み方と同じです。見方をまず変えれば、解釈が変わり考え方が変わります。そして、そっちの方が良いなっていう道を見つければ、自分を無理に変える必要はありません。勝手にしたい方向へ行くのでそれに従えばいいだけなのです。要は、その視点を変えることが重要で、今見えていないものを見えるようにするには高い所に登って見るもよし、少し離れて見るもよし、じっくり近づいて見るもよしなのです。それでも、見つからない場合は、少し休んでから見れば良い。そうしたら目の前にあることに気がつくことだってあるのです。そして視点を変えるのは、何も物理的に変えることが必要なわけではありませんよね。

私たちには想像力がある‼

この想像力を駆使して、高い意識でものを見るんだと思えば、目の前に見える景色は変わるものですよ(笑) 嘘みたいな話ですけど、最初から立派な人なんていないし、最初からやり方が分かってる人なんていないのですから…

このような方々は、ころころ見方が変わって、核心をついていくのです。「そうなんじゃないかな・・・」というちょっとした切欠から行動して、段々と分かってくるわけで、それが早いか遅いだけの話なのですよね。絶対に答えを見つけてやるって考える人と、俺は何をやってもダメだなと考える人、それぞれの見方があるとします。どちらが成功の種を見つけるのでしょうかと言われれば、皆様はどちらの方が見つけるとお思いになられますか?

出来ないところに目を向けるよりも、出来るところに目を向ける方がどれだけ有益な話かこれで分かると思います。ですから、高い所に意識を向け続けることが重要なのです。演技プランは高い次元で考えられたモノの方が良いのはそういう理由なのです。そしてこれは人生プランでも同じことが言えるのです。

演技プランも人生プランも高次元で物事を見られると良いですね‼

最後までご覧くださいまして誠に有難うございました。

劇団道化座に13年間所属し、日本各地、海外公演に数多く出演。道化座退団後はフリーで演出・俳優活動を行う。「社会に寄り添う演劇」を掲げ、2019年に劇団ブルアを設立。同劇団代表を務める。現在の演劇活動として、演出業、俳優業だけではなく、関西各地で演劇のワークショップで演技指導も行う。出演回数は400ステージを超え、実践的な演技指導が持ち味。またスタニスラフスキーシステムを独自にアレンジしたブルアメゾッドを作り、「身体動作から感情を誘発させる」演技術を展開し、リアリティーのある演技を追究。「役の人物を介して自分を表現する」「自己探求」などを念頭に演技向上を図り、ありのままの魅力的な自分で勝負する独特の演技コンセプトが好評を得ております。

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