舞台での立ち居振る舞い。
舞台での立ち方だけで、その役者の技量が分かる。
今回はこの話をさせていただきます。
ただ、この話は、こういうふうにした方が良いですよという話ではなく、
こういう話もありますよという程度で、お聞きいただけると幸いです。
何故、このようなことを申し上げるかというと……
舞台での動き方は、見様見真似ではなかなか得られない技術だから
です。
ですから、超簡単演技シリーズなどではお話しできない深い話でもあるのです。
熟練者の立ち居振る舞いは観客に伝わるようになっていますが、同じ動きを初心者がしてもそうは見えないという問題があるのです。
つまりは、型というものではなく、その人その人の最適な動き方があるという感じですね。
ですから、私が立ち居振る舞いを見本でお教えする時は必ず、
私がこうすればそういう意図したものに見えますが、あなたが同じ動きをしても同じように意図するものが伝わるとは限らない
と申し上げています。
これは、自分の自信と深くかかわるものでして、立ち居振る舞いの動きを自分が当然のようになれているかが鍵なのです。
人間は、見様見真似だけですと、どうしても、「これであっているのかな???」という思いが出てきます。
その思いを断ち切り、「これで良いのだ」と心底思いながら動けるかとうことなのです。
これは自分の動きに責任を持つとも言われて、ただ単位こうして見様見真似で動いてみましたではダメということですね。
ですので、立ち居振る舞いは自分の中で、「どうしてこう動くのか」「なぜこう動くのか」ということを自分の中で明確にすれば、自分の演技として初めて確立されるという訳です。
何度の高い演技の習得には、このように自分を信じなければ、到達できないものがたくさんあるので、日ごろからの自己肯定感を上げることは必須なのです。
そういう意味でも、自信を持ちたいという方であれば、この演劇を、学ばれると良いのになと思うところもあるのです。
では、本題の舞台での効果的な立ち位置の話を少しお話しします。
まず、この動画をご覧いただけますでしょうか?
この動画は、ブルアが運営する演劇ワークショップ「いわゆるえんげきの会」の練習風景です。
いわゆるえんげきの会は、関西の劇団の方が劇団の垣根を越えて学ぶ役者の勉強会で、只今10人の会員がいます。
上記の動画、BGMだけでただ風景を流しています。昔の無声映画みたいですね(笑)
動画の中では、同じシーンをお互いがお互いの役を体験してやってます。
動きは概ね、一緒ですが、細かなところは個人によって違います。
この動画にどんな演技的な動作があるのか?
演技を学びたての方にはまず見えないものかもしれません。
動画でのポイントは、効果的な位置取りと無意識の動作をテーマにしています。
まず、効果的な位置取りの話をしましょう。
登場人物は二人。何かを持っている人と手ぶらの人がいますね。(台本を持ってはいますが…(笑))
何かを持っている人の前を手ぶらの人が通り過ぎる動きをしています。
これが一つ目のポイントです。
この表現だけで、何が表せるかというと……
地位を表すことが出来ます
舞台での基本的な動きのルールでは、地位の高い人の前を横切らないというものがあります。
どうしても横切る時は、地位の高い人の後ろを通るというのが原則であるのですね。
ただし、どうしても後ろが通れず前を通らざるを得ない場合も当然ありますので、その時には、
地位の高い人の前を少し屈むような状態にして前を通り過ぎるであったり、その人に向かいつつ(観客に背を向ける形)横切るという方法があります。
ただ、これら二つは、結構難易度の高い横切り方になりますので、こういった場合は、地位の高い人の動きにも注文が入るのですね。
例えば、自分の前を横切らせたくない場合は、出来るだけ舞台前に立つであったり、舞台後ろに向いている時に通ってもらうとか、一段高いところに立つであったり、色々と方法があるのです。
このように二人のコンビネーションがしっかりとすれば、動きのバリエーションはたくさん作れて、躍動感が生まれ、調子づけることが出来たりもするのですね。
動画の場合ですと、何かを持っている人の前を何も持っていない人が前を横切っていますよね。
ですので、これですと、位の高い人が位の低い人の前を横切ったという、表現になるのです。
表現はこういったただ、単純に移動する動きだけでも、十分に伝わるのですね。
動作の演技は観客が無意識に感じとるものですので、『伝わりやすくなる』ということを是非覚えて下さいね。因みにセリフでの表現は「伝える表現になりやすい」ということも覚えておいてください。ここではこの説明は割愛します。
ただ、人の前を横切る動作。
実はこれだけではないのです。
もう一つ説明しましょう。それは……
前を通ることによって後ろの相手の芝居を生かすということ
が出来るのです。
つまり動画の中で言いますと、何かを持っている人の芝居を生かすことが出来ているということです。
前を横切る人を抜かした時点から後ろの人が前の人を目で追うという芝居が出来るのですね。
前を通る人を見るわけですから、顔は客席の方に向きやすいですし、この時に、自分がどのように前の人を「見送るか」という絶好の芝居フォーカスが得られるのです。
その見送り方で、地位だけでなく、どういった関係性なのかも説明できたりするのですね。
こういう動きも、当然無意識に伝わる演技ですので、自然にお客様の印象に残ります。
演技というのは、手品の逆のようなものでして、手品は、仕掛けのある方ではなく、仕掛けのないところにお客様にフォーカスしていただく技術を用いますが、演技は仕掛けることによってお客様にフォーカスしていただくところを自然に見ていただく技術なのです。
このように、相手の芝居を観てもらうために、わざと前を通ることもするのですね。
他にも、相手に詰め寄る芝居をするためにわざと、詰め寄る前に相手から距離を取ったりとか、見てもらいたいところをわざと大きく動いてみたりとか……
まだまだ沢山あるのですが、詳しく知りたい場合は演劇ワークショップで一緒に学んでみませんか?
説明を聞けばなるほどと思うことばかりですよ。
演技は見えないものばかりですので、目からウロコの話ばかりで面白いですよ。
ということで、舞台の立ち位置や動きだけでも、表現できちゃうんです。
では次に、無意識の動作について、次のページでお話しします。